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【レポート公開】アジアユースリーダーシッププログラム

掲載日:2026年4月17日


 JRFUの国際協力事業、アジアン・スクラム・プロジェクトの事業として、昨年度より、アジアユースリーダーシッププログラムを実施しています。
 本プログラムでは、ラグビーの普及とラグビーを通じた社会課題の解決におけるアジアの次世代のユースリーダーシップを目的としています。参加者のユースリーダー達は、プログラムを通じて、個人の成長、ラグビーの普及や社会課題への知識を身につけ、プログラム終了後は自分のコミュニティでプロジェクトを実施していくことを目指します。
 2024年度は、「RUCK’ed」としてマハラシュトラ州ラグビー協会(インド)とユースリーダーシッププログラムを実施し、インドで環境に配慮したラグビー大会(Green 7’s Cup)を実施しました。
 今年度は、フィリピンラグビーフットボール協会(PRFU)の協力のもと、日本において「多文化共生」をテーマにプログラムを実施し、アジア大会の開催地であり海外にルーツを持つ方々が多く居住する愛知県豊田市と、ラグビーの聖地「熊谷ラグビー場」を有する埼玉県熊谷市の2地域を会場として実施いたしました。
 参加者は日本とフィリピンからそれぞれ4名ずつ、現役の選手やコーチ、教員や大会運営など、様々なバックグラウンドを有する人材が参加しました。




以下、活動のレポートです。


オンラインセッション

オンラインセッションでは、対面セッションの前に、国際的なラグビー普及の動向、日本とフィリピンそれぞれのラグビー普及における課題や、ラグビーを通じた社会課題への取り組み等について学びました。

女子ラグビー2025の成功から学ぶ

 ワールドラグビーのHead of Women's RugbyであるAtlanta St John氏から、2025年に開催された女子ラグビーワールドカップ2025の成功とその要因、また女子ラグビーが社会にもたらすインパクトについてご講義をいただきました。
「女子ラグビーが社会における女性のあり方にどれだけ影響を与えているか、知らなかった。すごくパワフルだと感じました」といった参加者の声もあり、参加者はラグビーや選手が社会にどのようなメッセージを発信し、影響を与えることができるかについて学びました。

Atlanta St John氏から女子ワールドカップ2025に関するセッション
Atlanta St John氏から女子ワールドカップ2025に関するセッション

日本とフィリピンにおけるラグビーの普及

 次に、JRFUとPRFUからそれぞれの国が実施しているラグビー普及や様々な課題解決に向けた取り組みについて説明をしました。フィリピンは、国内でも地域によって様々な特徴がある中で、各地域に合わせた普及の戦略を実施しており、その事例等が共有されました。
日本では、普及育成の戦略に加え、その中でも地域の普及活動において重要な役割を果たすRegional Development Officer(RDO)の業務内容ついて共有し、参加者は自国のラグビー普及の現状や取り組みについて知識を深めました。

リーダーシップ vs マネジメント

 最後に、「Leadership is not a noun but a verb(リーダーシップは名詞でなく、動詞である)」というプログラムで大切にしているキーワードが共有され、ファシリテーターのSaif Ullah Khan氏からは「リーダーシップとマネジメントの違い」と「良いリーダーシップとは何なのか」と参加者に問いかける場面がありました。
参加者はリーダーシップにも様々な種類があることを学びながら、「自分にとってリーダーシップとは何を意味するのか」について考えを深めました。


対面セッション

リーダーシップの学び

インスピレーショントーク:日本代表チームのチーム作りに学ぶ多様性とワンチーム
 国籍の違いをはじめとする多様なバックグラウンドを持つ選手とともに世界で戦う、15人制男子日本代表チームディレクターの永友洋司氏より、チームづくりとリーダーシップについてご講義いただきました。
講義では、これまでの永友氏の歩みを踏まえ、プロフェッショナルとして、また一人の人間として大切にしている価値観にも触れながら、日本代表のチームづくりについて熱意をもってお話しいただきました。
「自分たちの正解をつくる努力」や「リーダーとしての一貫性」など、まさに世界の最前線で戦う永友氏とのリアルな学びと対話を通じて、参加者にとって「リーダーとは何か」を深く考える貴重な機会となりました。

15人制男子日本代表チームディレクター の永友氏と
15人制男子日本代表チームディレクター の永友氏と

ツリーモデル:社会課題と自分の想い
 また、自己理解や社会課題への理解とつながりを深めるためのワークとして、Saif氏のファシリテーションの下、ツリーモデルという手法を用い、自身の関心のある課題や想い(根)と、それによって生じている結果(実)との関係性を整理するワークを実施しました。本ワークを通じて、参加者は自身の中にあるばくぜんとした思いや課題意識に向き合いました。

ツリーモデルを基に、自分達の考え方をシェア
ツリーモデルを基に、自分達の考え方をシェア

ラグビーの普及とラグビーを通じた社会課題へのアクション

 アジア大会におけるラグビー競技について、アジア競技大会組織委員会のラグビーテクニカルオペレーションマネージャーである竹山将史氏およびサービスマネージャーである金子 岳暉氏より、国際大会の準備および運営方法についてご講義いただきました。
国際大会においては、多くの部署が大会の成功に向けて連携して機能していること、また都市計画においてレガシーの視点が取り入れられていることなど、実際に組織委員会で準備を進めているお二人から多くの学びを得ることができました。

ラグビーワールドカップ2019のレガシー

 2019年ラグビーワールドカップ実施時、ラグビーワールドカップ2019のレガシーコーディネーターとしてアジアン・スクラム・プロジェクトを推進してきた、西機真現普及育成委員長より、ラグビーワールドカップ2019におけるレガシーの取り組みについてご講義いただきました。
日本のラグビー発展における大きなターニングポイントとなった同大会が、アジアにおけるラグビー普及や震災復興、さらには地域活性化など、いかに多くの社会的価値を創出してきたかについてお話しいただきました。
また、2019年から7年が経過した現在においても、本プログラムはそのレガシーの一部として位置付けられており、ラグビーの普及や社会課題への取り組みを継続していくことによって新たなインパクトが生まれるという、力強いメッセージが参加者に届けられました。

地域でのリーグワンチームの取り組み:豊田自動織機シャトルズ愛知のタグラグビーを通じた教育活動
 愛知県を拠点に活動する豊田自動織機シャトルズ愛知の酒井 聡氏および松本 仁志氏より、県内の小学校におけるタグラグビーの取り組みについてご講義いただきました。
本活動は、地域の学校へのヒアリングをもとに生まれたものであり、タグラグビーの普及にとどまらず、ラグビーの持つ教育的価値を伝える取り組みとして実施されています。また、こうした活動に選手やトップチームが関わることによる社会的インパクトについても理解を深めることができました。

豊田自動織機シャトルズ酒井氏、松元氏から地域の取り組みについてのセッション
豊田自動織機シャトルズ酒井氏、松元氏から地域の取り組みについてのセッション

地域における社会課題

豊田市の多文化共生の取り組み
 豊田市では、ダイバーシティに関する啓発活動や「やさしい日本語」の活用、多文化理解の促進、さらには多言語での情報提供など、海外にルーツを持つ人々が暮らしやすいまちづくりに取り組んでいます。こうした取り組みから、自治体の政策と現場での実践が垂直的につながることで、多文化共生の実現に向けた取り組みがより効果的に推進されることの重要性を学びました。
また、「スポーツは国籍や言語、文化を超えて人々をつなぐ力がある」との言葉を通じて、スポーツが持つ可能性や社会的役割への期待についても共有いただきました。

保美団地での居場所づくり:JUNTOS
 豊田市において、さまざまな国にルーツを持つ人々が多く居住する保美団地で、年齢や国籍に関わらず参加できるコミュニティづくりを行っているJUNTOSより、代表の吉村迅翔氏にお越しいただきました。JUNTOSの地域における活動について学ぶとともに、ユースリーダーが主体となって実施するラグビーナイトの運営に関する助言をいただきました。
「何かをしてあげる、という関係になっていないか」「自分たち自身も一緒に楽しめているか」といった問いかけを通じて、参加者は多様なコミュニティの人々と関わる際の在り方について考えを深めました。また、自らも楽しみながら活動することの重要性を再認識し、今後の活動に向けた意欲やエネルギーを得る機会となりました。

ラグビーナイト

 対面セッションの終盤には、これまでの学びを生かし、西保見小学校において「ラグビーナイト」の企画から運営までを実施しました。
JUNTOSの伴走のもと、誰もが安心・安全に参加できる場をつくるために、目的の設定や参加者が守るべき「ハウスルール」の策定、コミュニティへの声掛けに関する助言を受けながら、準備を進めました。
限られた時間の中で、ラグビー未経験の子どもたちにどのように楽しんでもらうか、またどのように参加を促すかについて、参加者全員で検討し、イベントを実施しました。
当日は、さまざまなルーツを持つ子どもたち約50名が参加し、その多くがラグビー未経験者でした。多くの子どもたちと関わる中で、ユースリーダーそれぞれがリーダーシップを発揮し、参加した子どもたちや地域の方々にラグビーの魅力を伝えることができました。

ラグビータウン埼玉県熊谷市での学び

 プログラムの最後は、ラグビータウン埼玉県熊谷市で小学生のタグラグビー全国大会であるSMBCカップの視察と、リーグワンチームのパナソニックワイルドナイツを訪問。最後にこれまでの学びをプレゼンテーションし、プログラムを締めくくりました。

パナソニックワイルドナイツのチームづくり
 パナソニック ワイルドナイツのInternational Relations Manager 矢崎誠氏より、「世界一」のチームを目指す同チームのチームづくりや、企業スポーツにおけるビジネスモデルについてご講義いただきました。
講義を通じて、チームの一員として求められるマインドセットやビジョンについて理解を深めるとともに、日本トップレベルのチームから学ぶ貴重な機会となりました。

プログラムの学びとこれから
 プログラムの締めくくりとして、グループに分かれ、これまでの学びとアジア大会に向けてどのようなアクションができるかのプレゼンテーションを実施。
アジア大会を契機とした多文化共生の推進に関する取り組みについて、プレゼンテーションを行いました。
大会を契機に様々なルーツのある人達のコミュニティ間を繋ぐような取り組みをどうできるか、などこれまで学んだ社会課題とラグビーナイトの経験からアイデアを発表しました。


 1週間の本プログラムを通じて、自身やチームメイトと向き合うとともに、地域の方々やラグビー関係者との交流を通じて、ラグビーの普及やラグビーを通じた社会課題への取り組みについて、多くの学びと実践の機会を得る時間となりました。
参加者は今後、それぞれ自分の地域で、活動を進めていきます。

今回、日本とフィリピンから参加したユースリーダー(左から:御厨 丈、Ma. Catalina Carmen A. Kwan、岡田 翔平、森 勇人、草野 可凜、Christopher Bryan C. Saldaña、Wyld Hilayo Flowers、Vironica Salomon)
今回、日本とフィリピンから参加したユースリーダー(左から:御厨 丈、Ma. Catalina Carmen A. Kwan、岡田 翔平、森 勇人、草野 可凜、Christopher Bryan C. Saldaña、Wyld Hilayo Flowers、Vironica Salomon)